京都大学大学院理学研究科化学専攻 京都大学理学部化学教室

menu

物理化学分科

化学反応ダイナミクス:化学の基礎

一般に物理化学は、分子の構造・反応・物性の根源を物理学的に明らかにし、現代化学の論理的学問体系を構築する分野である。当研究室は、その中でも特に化学反応やエネルギー移動等の動的過程を研究対象とし、これらの本質を分子の電子運動や核の運動レベルで詳細に解明する。対象とする化学反応は小分子の衝突反応から生体分子と水の相互作用まで幅広い領域に及び、これらは宇宙空間における物質の進化、大気環境化学から生物化学に至るあらゆる化学の基礎となる。このような研究は、化学反応機構や制御の学理を深めると共に、人類の直面する環境・エネルギー科学を含めた物質の状態変化を伴う幅広い問題を考える確固たる基礎となる。当分科で研究のフロンティアに立つ開拓精神とそれを支える高度な実験技術を身につけた学生諸君は、これら諸問題に果敢に取り組んでいけるようになるだろう。

化学反応ダイナミクスの研究

水溶液の化学は、生命の分子論的基礎であり、物質開発と地球環境保全の共存するGreen Chemistryの観点からも重要である。水素結合による秩序形成や強いクーロン相互作用を含む水中での化学反応ダイナミクスを解明するために、我々は液体の超高速光電子分光を開拓している。水溶液中で反応しつつある分子からフェムト秒の超高時間分解能で価電子を放出させ、そのエネルギー分析により、反応機構の詳細と溶質溶媒相互作用の果たす重要な役割を追跡している。このような研究は、遺伝子の放射線損傷、光触媒、太陽電池などの応用課題にも強く関連する。一方、外界から全く摂動を受けていない孤立極低温分子の光化学反応の研究は、溶媒の果たす本質的な役割を理解する上で極めて重要である。我々は、超音速分子線と超高速光電子イメージング法による気相分子の反応実験を最先端の理論計算と連携し、反応の基本的理解を確実にしながら、より複雑な溶液化学の研究を進めている。

短波長極短パルス光源の開発

上記のような先端的な超高速光電子分光を行うために、当研究室では波長200 nm以下の真空紫外領域の極短パルス発生技術を開発している。フィラメンテーション四光波混合と高次高調波発生の2種類の実験技術を用いて、90-160 nmのパルスを1 kHzの高繰り返し周波数で発生し、分光システムを構築している。

(最終更新日:2017年10月31日)