京都大学大学院理学研究科化学専攻 京都大学理学部化学教室

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光物理化学分科

レーザー分光学&顕微光学で生体分子、細胞、凝縮相の反応を解明する

●光センサーや光エネルギー変換に関わる生体タンパク質の立体構造が次々に明らかにされているが立体構造がわかっても機能発現の仕組みが不明なものは多い。機能の発現には蓄積されにくい過渡状態が関わることが多い。そこで、変化するタンパク質自身の構造変化や運動を観察したり、タンパク質が別のタンパク質へ信号伝達する仕組みを研究する有効な手段の開発が必要となる。レーザー分光法である過渡回折格子分光法では、分子が過渡的に示す全体構造の変化や周囲の水溶液との相互作用の変化を捉えることができる。色素分子とその周囲の変化やタンパク質2次構造の変化の検出に限定される従来の分光法とは異なった相補的で新規な情報を与えることが出来る。

●多数のタンパク質分子を同時に見て平均化するならば個々の分子の振る舞いは失われてしまう。そこで、我々は近年発達している単一分子を直接可視化する技術を用いて、生体分子の動的な機能発現のメカニズムの解明に取り組んでいる。

●精製したタンパク質の研究に留まらず、タンパク質が細胞やオルガネラ内で機能する現場を直接捉える研究も進行中である。例えば、植物の葉緑体では、光化学エネルギー変換(光合成)が行われるが、植物の環境に応じて光合成膜3次元構造やその化学組成が変化する。これを直接空間分解して数十から数百ナノメートルの微細構造変化を捉える。電子顕微鏡とは異なり、生きたままの微細構造や分子レベルの相互作用を追跡できることが特長となる。

●生体分子反応の現場である凝縮相は単純化された系においても未だ理解が不十分な現象は多い。光反応によって生成する活性分子(励起分子やラジカル)の性質と分子運動をフェムト秒(10-15秒)から秒オーダーまで調べることが可能である。近年、応用が注目される高温高圧の超臨界状態の水や食塩のようなイオンから構成されるにもかかわらず液体状態で存在するイオン液体など、特異的な溶媒環境での化学反応や分子のダイナミクスをレーザー分光法などで調べている。

(最終更新日:2013年01月08日)