京都大学大学院理学研究科化学専攻 京都大学理学部化学教室

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生物構造化学分科

教授 深井 周也 准教授 竹田 一旗 助教 尾勝 圭

生命活動は化学反応の集大成と言えるでしょう。例えば、私たちの目が光をとらえる場合も、筋肉の動作も、はたまた、親から子への形質の遺伝においても、種々の化学反応がその巧みな組み合わせによって重要な使命を果たしています。このような生体内の反応は、全て厳密な制御のもとに行われています。この制御を担うのがタンパク質です。タンパク質は20種類のアミノ酸のポリマーですが、それぞれのタンパク質が固有にもっている機能は、それが折れたたまれて三次元的な立体構造を形成することで初めて発揮されます。それゆえに、タンパク質の三次元構造は、そのはたらきを理解する上で、本質的に重要かつ不可欠な情報です。私たち生物構造化学研究室では、このようなさまざまな生体内反応ではたらくタンパク質の三次元構造を原子レベルで決定して、そのタンパク質のかたち(構造)とはたらき(機能)の関係を解明することで、生命活動を支える化学反応の本質に迫る研究を行っています。

タンパク質の立体構造を決定するための手法としては、X線結晶解析やクライオ電子顕微鏡を用います。これらの方法では、まず遺伝子操作技術を用いて目的のタンパク質を発現させたのちに、液体クロマトグラフィーによる精製を行い、純粋なタンパク質を得るところから始まります。X線結晶解析では、この純粋なタンパク質を結晶化して、X線を照射することでその回折像を得ます。回折像にはタンパク質分子の電子分布に関する情報が含まれていて、これを解析することで結晶内の電子密度図を得ることができます。一方、クライオ電子顕微鏡では、純粋なタンパク質をカーボングリッドに載せ、極薄の氷が張った状態で急速凍結した試料の透過像を撮影します。得られる複数の投影像から、計算機上で三次元像を再構成することで、X線結晶解析の電子密度図に対応する密度図を得ることができます。得られた密度図にタンパク質の分子構造を組み立てていくことで、求める正確な立体構造を高い分解能で決定することができます。

代表的な研究テーマとしては、神経細胞の信号伝達を行う細胞接着構造(シナプス)を作る膜受容体様タンパク質、細胞内の多様な分子シグナルの伝達を担うユビキチンに関連するタンパク質、光エネルギーにより作動するタンパク質群、高い選択性・効率で化学反応を直接制御する酵素などがあります。 このような生命現象の研究を通して科学を楽しもうとする諸君が、私たちの研究室でさまざまな生命科学のテーマに挑戦してくれることを望んでいます。

タンパク質の結晶
X線回折像
タンパク質の電子密度