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■京化■京都大学理学部化学科・京都大学大学院理学研究科学専攻

無機物質化学分科

准教授 中西 和樹 助教 金森 主祥

 私達の研究室では、無機物質・材料の化学に関する研究を行っています。無機化学というのは非常に広範な元素からなる化合物を対象にする学問分野です。中でも、私達の研究対象の中心はシリカ(SiO2)やアルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)などの金属酸化物です。これらの物質を微視的に見ると原子が規則的に配列した結晶状態と、無秩序に配列した非晶質状態(ガラスもその1つです)に大別されます。これら2種類の状態は、化学組成や温度・圧力などの熱力学変数に依存しますが、一般に結晶はある組成において最も安定な状態であるのに対して、非晶質は準安定と呼ばれる少しエネルギーの高い状態であり、非平衡な形成過程によって得られます。具体的な合成法としては、融液を冷却する方法やスパッタリングなどの気相法、そして以下に紹介するゾル-ゲル法などの液相法が挙げられます。典型的なゾル-ゲル法では、室温で液体の化合物であるテトラアルコキシシラン(Si(OR)4)を図1のように加水分解・重縮合させ、図2に示すような重合体を得ます。

図1 加水分解・重縮合反応

図2 重合体の模式図

 シロキサン(Si-O-Si)結合が十分発達すると、液体(ゾル)から固体(ゲル)への転移が起こり、いわゆるシリカゲルが得られます。また、テトラアルコキシシランの代わりに有機置換基R’の入った有機トリアルコキシシラン(R’Si(OR)3)などを用いると、無機物と有機物が分子レベルで複合化した有機−無機ハイブリッド物質が得られ、有機官能基による機能発現や、無機物質の脆性(脆さ)の改善などが可能となります。

 私達は、このような手法を用い、様々な多孔性物質の合成・評価・応用を進めています。多孔性物質とは、軽石やスポンジのように、内部に多くの細孔を有する物質のことです。以下に、私たちが注力して研究を行っている多孔体を2種類紹介します。

 アルコキシシランの重縮合反応中に相分離が起こるように工夫すると、相分離途中の構造がゲル化によって固まり、図3に示すようなマイクロメートル領域にマクロ孔と呼ばれる細孔をもつ共連続構造の多孔体が得られます。この手法では、得られる細孔の状態を自由に変えることができ、マクロ孔を構成する骨格の中にもさらに小さい細孔(メソ孔)を作ることもできます。すなわち、このような物質の中には、液体が高速で移動できるマクロ孔と大きな表面積を提供するメソ孔が共存するため、極めて効率的な分離媒体として利用可能です。図4は極端な例ですが、アルキルベンゼン混合物を10秒以内に分離した結果です。この多孔体は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用の分離カラムとして研究・開発など様々な場面で活躍しています。

図3 シリカゲルにおける典型的なマクロ孔(左)とメソ孔(右)

図4 アルキルベンゼンの高速分離を示すクロマトグラム

 もう1つの多孔体は、エアロゲルと呼ばれる、90 %以上の高い気孔率と数十ナノメートルの微細な細孔をもつ多孔性物質群です。固体成分が少なく、可視光の波長(380−780 nm)よりも1桁短い構造で構成されているため、エアロゲルは透明・低屈折率性であり、高い断熱性など面白い物性を示します。典型的なエアロゲルはシリカで作られていますが、気孔率が非常に高いため固体としての強度が非常に低いことが問題とされてきました。しかし近年、私達の研究によって、有機−無機ハイブリッド組成でエアロゲルを作ることが可能となり(図5)、機械的強度が大幅に改善できることが明らかとなりました(図6)。この物質で効率の良い断熱材を簡単に作ることができれば、地球規模の環境・エネルギー問題解決に貢献することができるかもしれません。

図5 得られた有機−無機ハイブリッドエアロゲル

図6 壊れることなく圧縮され、スポンジのように再び元に戻る性質が確認された

 この他にも、無機物質化学分科では様々な新しい無機物質の合成や物性測定、構造評価に関する研究を行っています。研究内容についてさらに詳しく知りたい、あるいは研究室の様子を知りたい人は、下記研究室ウェブサイトも参照して下さい。

(最終更新日;2012年06月01日)

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