表面物性分光分科
新規磁性表面新物質相の創製評価と表面磁性分光法の新規開拓
磁性薄膜は垂直磁化や巨大磁気抵抗などの興味深い磁気特性を示し,基礎科学的にも応用的な見地からも広く研究が行われている。当研究室では,基板や磁性薄膜を表面化学的に修飾することにより磁気特性の大きく異なる表面新物質相を創製し、シンクロトロン放射光を用いたX線磁気円二色性法やレーザーを用いた磁気光学Kerr効果などにより、その磁気特性を評価解析している。
一方、2006年に光エネルギーを仕事関数しきい値付近に合わせることで紫外光電子磁気円二色性感度が100〜1000倍も向上するという現象を発見し、これに基づいて、全く新しい磁気顕微鏡として紫外磁気円二色性光電子顕微鏡を発明した。さらに、波長可変超短パルス紫外レーザーを用いた超高速時間分解磁気顕微鏡の開発や2光子励起を利用した拡張を検討中である。今年度はこれまでに全く例のない自然円二色性を利用したキラル顕微鏡の開発にも着手した。
主な研究課題 1. 新規磁性表面新物質相の創製とX線磁気円二色性による評価解析
シンクロトロン放射光を用いたX線磁気円二色性(XMCD)は、元素識別が可能な磁性評価手段として最近広く利用されるようになっている。当研究室では、分子科学研究所の放射光施設UVSOR-IIに超伝導磁石(7 T)極低温(5 K)XMCD測定装置(図1)を導入し、主としてin situ表面磁性測定を行っている。
XMCDの測定例として、Cu(110)表面をNで修飾したCu(110)-(2×3)N表面に自己組織化的に成長する磁性ナノロッド(図2)の結果を示す(図3)。
通常の棒状磁石は軸に平行に磁化されやすい性質をもつが、このナノロッドでは棒に垂直な方向が磁化されやすいという特異な性質が見出された。
当研究室では、分子磁性体を含めて新たな表面磁性新物質相の創製を行い、実験室での磁気光学Kerr効果測定などによる評価とXMCD測定を行うことで、磁気特性の理解を進めている。
主な研究課題 2. 新しい磁気顕微鏡−紫外磁気円二色性光電子顕微鏡−の開発
XMCDと光電子顕微鏡(PEEM)を組み合わせた磁気顕微鏡XMCD PEEMはよく知られているが、第3世代放射光施設の利用が必須で、時間分解能も現状では数10 ps程度に制限される。我々は、実験室で測定が可能で時間分解能も100 fsの紫外レーザーを用いたUV MCD PEEMを発明し、さらに開発を継続中である。従来、紫外光を用いたMCDは感度が大変小さく応用が限られていたが、仕事関数しきい値近傍でその感度が通常の2-3桁向上する現象を発見した(図4)。
感度が最大のところでは-10%にも達しており、XMCDに匹敵する感度である。入射光の波長を最適化することで、図5に示すようなUV MCD PEEM像を世界で初めて観測することに成功した。また、超高速時間分解(~200 fs) UV MCD PEEM測定にも試験的に成功し、さらには、利用可能な光の波長域が大幅に拡大できる2光子励起UV MCD PEEM像も得ることができた。現在は、キラル識別を可能とするキラル顕微鏡を実現するため、紫外自然円二色性光電子顕微鏡の開発にも取り組んでいる。
関連リンク:自然科学研究機構 分子科学研究所 研究室ホームページ
(最終更新日;2011年04月08日)
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