「新規物質創製変換」領域
                     “The Second Trilateral Workshop on Organic Chemistry”

                                         化学研究所 辻 勇人
趣旨:有機化学分野での台湾と我が国との結び付きは強く,これまでに長い交流の歴史がある。昨年,本21世紀COEプログラム「京都大学化学連携研究教育拠点」の交流事業プログラムの一環として,京都大学,中央研究院化学研究所,国立台湾大学化学系で有機化学を専攻する学生間の交流を通じて国際社会に通用する研究者を育成することを目的として,Tien-Yau Luh教授(国立台湾大学教授兼任)を代表とする有機化学分野のグループとの間で交流ワークショップを台湾中央研究院化学研究所にて開催した。今回は第2回目として,京都にて本交流ワークショップを開催することとなった。

開催場所:京都大学(桂キャンパス・吉田キャンパス)
開催日程:2004. 9. 4〜6
参加内訳:教官33名 学生47名
相手機関の名前:国立台湾大学

内容: 京都大学桂キャンパスならびに吉田キャンパスにて,平成16年9月4日(土)〜6日(月)の日程で“The Second Trilateral Workshop on Organic Chemistry”が台湾中央研究院化学研究所および国立台湾大学化学系の教官と学生を招いて開催された。本ワークショップは21世紀COEプログラム「京都大学化学連携研究教育拠点〜新しい物質変換化学の基盤構築と展開〜」の一環として,京都大学と台湾の中央研究院化学研究所および国立台湾大学化学系の3機関の間で昨年からおこなわれているものである。今回は,林教授(理学研究科),村上教授(工学研究科)が京都大学側代表,Luh教授が台湾側代表として,また,学生組織委員としては京都大学側からは工学研究科の山本暁彦君を中心に,化学研究所の田嶋智之君,理学研究科の徳永礼仁君が,台湾側はLi-Fu Huangさんがそれぞれ本交流ワークショップの準備運営にあたった。参加者は,京都大学側は教官計25名(理学研究科6名,工学研究科7名,化学研究所12名),学生24名(理学研究科6名,工学研究科7名,化学研究所11名),台湾側からはLuh教授を代表者とする教官8名,学生23名であった。[写真1]
 プログラム初日は台湾側の到着後,夕方から桂ホールにてオープニングセレモニーがとりおこなわれたのち,引き続き学生セッションAが始まり,日本側6名,台湾側5名の発表がおこなわれた。その後,台湾側一行を歓迎すべく,桂ラウンジにてレセプションがおこなわれた。2日目は場所を移動し,吉田キャンパス百周年時計台記念館内国際交流ホールにて,午前中にセッションB,午後にセッションC・Dがおこなわれ,日台あわせて計36名の学生が発表した。全学生セッション終了後,親交を深めるとともに,さらなるディスカッションをおこなうべく,同じく百周年時計台記念館内国際交流ホールにて立食形式のバンケットがおこなわれた。最終日は台湾側の教員と学生はエクスカーションに参加,帰国した。余談ではあるが,バンケット中に比較的大きな地震がおきたり,台風の影響で台湾側一行が予定通り帰国できるか危ぶまれるというハプニングもあったが,スケジュールは滞りなく消化された。
 学生の発表セッションでは,1回(約2時間)に11〜12名がまず英語で7分の口頭発表(質疑応答なし)ののちに,引き続きそのメンバーが約40分のポスター発表をする,という形式でおこなわれた。[写真2.写真3]このような形態は,英語による口頭発表の経験の場を学生に提供するとともに,自由なディスカッションをおこないやすいというポスターの利点も活かせるように工夫されたものである。[写真4]また,前回は教官セッションと学生セッションが独立しておこなわれたが,今回は教官セッションはおこなわず,上記のように方式を変更した学生セッションのみを用意し,教員の学生セッションへの参加もオープンとした。セッション自体の準備進行はあくまで学生主体という位置づけのもと,教員が参加することで,良い緊張感が生まれたものと思われる。それとは別に台湾側の教員には,桂キャンパス(工学研究科)および北部キャンパス(理学研究科)の最新設備見学の時間と,個別のディスカッションの時間を用意した。
 学生セッションに話を戻すと,台湾側の発表は素反応や重合触媒の開発,機能性ポリマーやデンドリマーの開発,有機無機ハイブリッド材料の開発,生体関連物質に関する研究など,有機化学広汎に亘るものであったためお互いに理解しやすく,またポスター形式にしたことで個人的に台湾側の学生と話をする機会や知り合う機会が多くなったためか,活発な議論がなされていた印象を受け,交流ワークショップとしては大成功であったと思われる。また,台湾側からは機能性材料の開発を指向した研究発表が突出して多かったことが印象的であった。台湾側教員によると,政府として次世代の機能性物質の開発研究を推進しているとのことであり,日本としても対応が迫られるところである。[写真5]

 第1回,第2回両方に参加した印象を総括すると,日本・台湾双方にとって得るものが多い有意義な交流ワークショップであったと思われる。特に,学生が英語で発表し,外国の学生や研究者と議論することを通じて,国際感覚を身につけるよいきっかけになったとの感想が聞かれ,教育面からも非常によい成果を挙げたと言える。
(記 辻 勇人)